高木貞二『回顧と展望』(青空文庫)に,数学の3つの花文字のA(Arithmetik, Algebra, Analysis)を幾何学的に統御するクラインに刺激を受けたとある. 計算機プログラムの世界にあてはめてみると,一番目のA,算術は計算機が最初期から得意としてきたものである. 二番目のA,代数の基本は未知量をXとおき方程式を立てることである. 変数,関数,そして対象を扱う計算機プログラムのオブジェクト指向の原点にあるものだろう. 三番目のAは解析である.実数に満ちた世界の切断面を「解析」するためのものと考えている.もう一つ,現代数学で登場した小文字のa,すなわちabstract(抽象)による数学の統一をどう考えるか.これを抽象は空虚な一般論だと退ける考え方もある.だが高木貞二は以下のように抽象による統一を擁護している.

具体と抽象とは、言葉の上では反対のようだけれども、数学統一の精神は同一である. 唯浅薄と固陋とがいけないのである.

沈思し古い因習を捨て,前へ進みなさい,それより他に道はありませんということと思う.